●「続・知らざる日豪関係」(37)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「ガラス張りの小さな閲覧室で待っていると、やがて係員が古い資料の束や、箱詰めのファイルを、机の上に届けてくれた。
 早速目をとおしてみると、それらはオーストラリア陸軍の、あるいは連合軍のレター・ヘッドにタイプ打ちされたもので、ほとんど例外なく、『CONFIDENTIAL(機密文書)』または『SECRET(秘密文書)』と、大きなスタンプが押されていた。
 もちろん私の前に出されたものは、戦後三十年の非公開期限が過ぎて、公開を許された範囲内のものだけである。
『カウラ第十二戦争捕虜収容所』の捕虜リストの中に、南忠男の名前はあった。」