●「続・知らざる日豪関係」(38)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「三十数年の歳月を経るうちにタイプのインクも褪せてしまったのか、文字が薄くぼやけて読みづらいが、間違いなく『MINAMI TADAO』と書いてある。
 ずらりと並んだアルファベットの捕虜名の中で、ややもすれば見落としそうであった。
 だが、名前の横に書いてある捕虜としての登録番号に目を移すと、『PWJA 110、001』と一度見たら忘れられないような、目立つ番号だ。
 十一万一番目の捕虜という意味なのか。
 いや、オーストラリア国内に十万を越す捕虜などいなかったはずだ。」