●「続・知らざる日豪関係」(42)
〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜
「もしかしたら、と思ってはいたものの、この説明を読み終わったとき、私はあらためて驚かされた。
南忠男という男は、収容所の中で目立っていただけでなく、その捕虜番号の上でも目立つ存在だったようだ。
脱走を企てた男、カウラ暴動で先頭に立って突撃ラッパを吹いた男に、いかにもふさわしい番号である。
早速私は、この思いもよらぬ捕虜番号を手に、捕虜名簿のあるヴィクトリア州州都メルボルンへ飛んだ。
捕虜番号さえわかればいかに膨大な名簿の山であろうとも、捜し出すのは不可能ではない。
ましてやこれほど目立つ番号なのだ。
公文書保管室は、市郊外の住宅街にある、古ぼけた木造の建物だった。」