●「続・知らざる日豪関係」(43)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「ギシギシときしむ廊下を通って庭に面した閲覧室に入り、係員に用件を伝えて待っていると、やがて箱詰めやファイルの山がワゴンに積まれて運ばれてきた。
 なるほど、これならば名前だけで一枚の捕虜名簿を捜し出すなど不可能なはずだ。
 たしかに厚さ二メートルに近い量だ。
 いったい全部で何枚あるのかわからないが、要するにその枚数分だけの人数の捕虜、あるいは民間人抑留者が、オーストラリア本土に収容されていたということだ。
 カビ臭い古いファイルを前に、私は南の名簿を捜しはじめた。
 だがこれは意外に手間どる作業だった。」