●「続・知らざる日豪関係」(49)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「南は突撃ラッパを吹きながら、死に向って突っ走り、そして自らの生命を絶った。
 これ以上の『移動』は、かれにはなかったのである。
 移動記録欄に残ったわずかな空白が、ラッパの鳴り止んだあとの静寂を表しているかのようだった。
 この日私が、メルボルン公文書保管室で南に関して得ることのできたのは、この捕虜名簿ただ一枚だけだった。
 残念ながらこの名簿には、かれがラヴデイ収容所で企てたらしい脱走計画、あるいは計画未遂についての記述はまったくない。
 ただちょっと興味をひいたのは、南忠男はたった一人で逮捕され、捕虜となっていたらしいということである。」