●「続・知らざる日豪関係」(112)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「『南が語りかける声』を期待したわけではないが、そうすることで何かがつかめるのではないかと思った。
 しかし、目の前には計器類のはずされたパネルの穴をとおし、七・七ミリ機関銃の弾倉が、鈍い光を反射しているだけだった。
 狭い操縦席内で、私は前後左右に体の向きを変えながら、隅々まで調べてみた。
 側板に外側から押されたようなくぼみが多少あるものの、骨材や補強材の類にはほとんど歪みは見られない。
 それに機体の内側は外側に比べ、腐蝕はもちろん錆もほとんど浮いていない、かなり良い状態である。
 航空史研究会では、古い機体の復元作業に、特殊なガスを吹きつけて錆や汚れを落とすというが、それはまだ使用していない。
 にもかかわらず、これほどきれいなのだ。」