●「続・知らざる日豪関係」(115)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「しばらくの間、私は毎日ホテルからこの格納庫へ通い、機体を調べた。
 胴体の裏側、両翼の裏側、両縁、そしてエンジン接合部などの本体をくまなくチェックし、それらの写真も撮った。
 格納庫内には南機の機体だけでなく、銃身の曲がった二〇ミリ固定機関銃も、翼からはずされて保管されていたし、また機体があったところから数百メートルの地点で見つかったという増槽タンクもあった。
 こうして実物を前にして調べることは、やはり公文書の報告書で活字を通すよりも多くの知識とヒントを、私に与えてくれた。
 そのうえ、連日のように私に付き添い、調べを手伝ってくれた研究会の人々から得た情報は、いかなる公文書の記録よりも重要な、そして貴重な資料となるものだった。」