●「続・知らざる日豪関係」(124)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「そこにはコンクリートが、大きくえぐられた穴があるだけだった。
 いったいこれがどうしたというのだ、この穴になにか特別な意味でもあるのだろうか。
 謎解きをするように、かれは口元をゆるめて、私の反応を窺っていた。
 が、すぐに私はかれのいおうとしていることがわかった。
『二〇ミリ機関銃のインパクトか?』
 私がそう尋ねるのを待っていたかのように、かれは大きく首を振ってうなずくと、説明しはじめた。
『近くで見つかった弾も保管してある。もちろんゼロ・ファイターのものだ。この格納庫の外には、七・七ミリ機関銃弾の跡もあった。わかるだろ、あの日のゼロはここもやったんだよ』」