●「続・知らざる日豪関係」(139)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「ふたたび私たちはトラックに乗り、ヤシの木々の間を縫うように走ると、アプスレー海峡に沿った道に出た。
 眼前には鮮やかなコバルト・ブルーの、大きな河のようなアプスレー海峡がゆったりとひろがリ、その向こうには手の届くような距離に、メルヴィル島がある。
 ここから見るメルヴィル島は、島というよりも水際に繁茂するマングローブの、巨大な林のようだった。
 トラックが止まったのは、ミッションの一隅にある、教会関係者たちの宿舎らしきところだった。
 こんなところになにがあるのだろう、誰か教会関係者であのダーウィン空襲について知っている人がいるのだろうか、いぶかしげにしている私に同行のかれはトラックを降りて歩きながら説明をはじめた。」