●「続・知らざる日豪関係」(145)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「(中略)ひと通り『日本軍』の話が出たところで、私は話題を変えて南忠男について尋ねた。
『その空襲のときに、零戦が一機撃墜されて、隣のメルヴィル島に落ちたんですが、どうやらパイロットは生き残ったらしく、沿岸警備隊に逮捕されたようです。
 それについて何か御存知ないでしょうか?』
『ああ、あのパイロットですね、いや、あなたのおっしゃる人かどうかはわかりませんが』
 さり気なく返ってきたかれの答に、私は耳を疑った。
『本当ですか、その男の右目上には傷がありませんでしたか、かなり大きな傷だったらしいのですが』
『さあ、どうでしたかねえ、なにぶん三十数年前のことですから。
 あったようにも思いますが』」