●「続・知らざる日豪関係」(148)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「もちろん1〇〇パーセントの断定はできないものの、この話を聞いたとき、私は心の中に散らばっていたいくつかの点が、急に距離をつめて一つの線になりつつあるような気持ちになった。
 それはちょうど、あのメルボルン公文書保管室で、『南忠男』自筆の署名を見つけたときの安堵感と同じものであり、また一歩、南と私との距離がせばまったという親近感にも似たものだった。
 ブラザー・パイのもとを辞したあと、私は教会の前を通り、ふたたび赤い土煙の舞うブッシュの道を抜けると、飛行機の待っている滑走路へと帰って行った。
 離陸後、島の上空をひと回りすると、機首をダーウィン方向へと向けた。」