●「続・知らざる日豪関係」(166)

 
 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


朝鮮人捕虜マツモトが立ち聞きした話では『守備隊を襲撃し、武器弾薬を奪取する』ことになっていたはずである。
 おそらくこの行動計画は強硬派最古参捕虜として主導権を握る南が、ラムゼイ少佐から分離移動を通達された午後二時から、吉田の供述書にある午前零時までの十時間以内に作成したものだろうが、かれは収容所脱出後の計画を立てていなかったのだろうか。
 六月三日のマツモトの密告情報では、すでにアウトラインは決定していたようだから、それから二カ月後の八月四日に、急に一斉蜂起が決定しようとも『最終指令』を出すだけで充分なはずである。
 まさか南がその部分だけ指令を出さなかったとは思えない。」