●「続・知らざる日豪関係」(178)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「新聞には大雑把な国内地図ぐらいは載ることもあっただろうし、飛行機隊に所属していた南なら、多少の地理もつかんでいたかもしれない。
 前二回の脱走の目的は、なんらかの手段でこうした日本軍の攻撃に合流することではなかったのだろうか。
 比較的海に近いラヴディ収容所では実行したが未遂に終わり、海から遠いヘイ収容所では実行しなかったというのも、その距離を考えるとうなずけないこともない。
 カウラ収容所の場合、最も近い海岸線はシドニーの南西八〇キロにあるウールンゴンの町である。
 カウラ、ウールンゴン間は直線距離で約二二〇〜二三〇キロ。
 途中、大分水嶺の山脈地帯や大牧草原があるが、いずれも人口密度はきわめて希薄だ。」