●「続・知らざる日豪関係」(194)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「以上が及川晃少尉と名乗る士官の援護局における報告をもとにした記事の抜粋だが、一読してわかるように、暴動の計画も目的も、私が公文書で調べたものや生還者の話を集めたものと同じである。
 しかしこの文章から受ける印象として、及川少尉がこの暴動計画に関与していたようなニュアンスがある。
 下士官である南が将校に従うというのは充分考えられるし、さらに捕虜たち、とりわけ強硬派指導者の南は、この暴動を玉砕戦のための『出撃』とみなしていたであろうから、『軍隊』としての指揮系統を求めるのはむしろ当然のことである。
『暴動』という言葉などあくまでもあとになって使用された言葉であり、当事者の捕虜たちにとっては、これはまぎれもない『戦闘行為』だったはずである。」