〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜
「その日は快晴で、気持ちの良い日だった。
町の南西の郊外にある飛行場からセスナ機で飛び立ち、陽光の中を北東へすすむと、やがて広大な芝生のような、収容所跡の牧草地が見えてきた。
こうして上空から見ると、一面の緑である。
白い岩が突き出た丘、ユーカリの林、牛が草食み羊が群れる草原、ここで『死の突撃ラッパ』が鳴り渡ったなど、とても信じられぬようなのどかな光景だった。
緩やかな角度で旋回に入ると、公文書の平面図、それにチャート図を照らし合わせながら頭の中で、各コンパウンドの場所をなぞるように想像してみた。」