●「続・知らざる日豪関係」(206)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「私はチャート図と照合してみた。
 しかしそんなものは出ているはずもない。
 なんだろうと思いながらさらに高度を下げて収容所平面図と見くらべたとき、まさか、と信じられなかった。
 二列に並ぶ白い点は、ブロードウェイの柵の跡だったのである。
 かなり大きな杭を使っていたのだろう、それを取り除いたあともほとんど草が生えずに土が露出し、それが点になって見えたのだ。
 四十年近くたってもまだ消えぬ、それどころか不気味なほど鮮明に見えるこの杭の跡は、まるでここで死んだ捕虜たちの魂がへばりついているかのようだった。」