●「続・知らざる日豪関係」(211)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「S君の走った距離は、日本兵捕虜の走った距離とほとんど変らないだろう。
 しかし忘れてならないのは柵である。
 高さ約二メートルの鉄条網やコイル状有刺鉄線の山を越えなくてはならない。
 機銃掃射はいつはじまったのかわからないが、最初の捕虜が柵を越える頃には確実に開始されていただろう。
 遅くともブロードウェイを走っているときには銃は火を噴いているはずだ。
 したがってこの機銃掃射にも足止めを喰わされる。
 大雑把にみて、脱柵に二分、足止めに一分ほどあったとして、五分四十秒である。」