●「続・知らざる日豪関係」(232)
〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜
「マツモトの取り調べには情報部のシェルトン少佐、A・T・I・S(ARMY TRANSFER & INTERRROGATE SECTION=陸軍部捕虜移送及び訊問部)のジョーダン大尉とマン大尉があたり、そして一九四四年六月三日付の密告情報報告書は、このボーマン氏が作成したのだった。
『そのマツモトは、どの日本兵捕虜の話を立ち聞きしたのでしょうか』
もしや情報部の人間ならば、と淡い期待を込めて、私は尋ねた。
しかしやはり駄目だった。
ボーマン氏も、知らなかったのだ。
マツモトは多分、その捕虜の顔すら見てなかったのかもしれないし、見たとしても名前は知らなかったのだろう。」