●「続・知らざる日豪関係」(233)
〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜
「そのあとボーマン氏は、密告情報入手後に情報部がとった措置、事件当夜のこと、査問会議に関することなどを、詳しく話してくれた。
一情報部員として、そして弁護士として、意見をはさみながら説明してくれる内容は、たしかに興味深いものではあった。
しかし話を聞きながら、私が不思議に思ったのは、そこに南忠男に関する話が、ほとんど出てこないことだった。
たとえマツモトが立ち聞きした話の主が、南ではなかったとしても、かれは収容所の主導権を握る男だったのだ。
情報部としては、当然かれをマークしていたはずである。
ところが、ボーマン氏の話からは、そうしたことはまったくないようだった。」