●「続・知らざる日豪関係」(245)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「南の言葉に森木氏はすぐに反応した。
 かれはニューギニアの飢餓地獄で捕虜となって以来、あちこちの病院を転送される間、病院の食事で割り当て以上の量を食べ、オーストラリア兵に何度か『ハングリー・ボーイ』となかば冗談でいわれていたからだ。
 しかし南のいう『ハングリー・ボーイ』は、明らかに違う意味だった。
 森木氏は反論した。
『たしかにそうかもしれない。しかしわれわれ陸軍のほとんどは、食糧補給もないジャングルの中で死線上をさまよっていたのだ。
 餓死一歩前の極端な栄養失調のわれわれが、一朝一夕で回復するわけがないじゃないか』」