●「続・知らざる日豪関係」(250)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「『そうです。それから南さんが突撃ラッパを吹き、それを合図に私たちは走り出しました。
 途中でまた突撃ラッパが聞えましたが、それっきりでした。
 あれが南さんの最後だったんですねえ。
 そりゃ対立もしていましたが、非常に芯の強い男で、心中尊敬もしていました。
 普段はみんなを笑わせたりして、ひょうきんな面白い人でしたよ。
 南さんの容貌ですか、ええ、中肉中背、しかしがっしりとした人でした。
 右目と眉との間に大きな切り傷があったのを、はっきりと覚えています。
 飛行機の墜落でやった傷だと聞いていましたが、それ以上のことは誰も知りませんでした。
 かれは自分のことは絶対に話そうとはしませんでしたから』」