●「続・知らざる日豪関係」(252)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「町の中央から北へのびる道を五分ほど走ると、大牧草地帯の真ん中に、ポプラとユーカリの木に囲まれた墓地がある。
 その一郭が、日本人戦争墓地だった。
 バスが止まり、圧搾空気を抜く音とともにドアが開くと、森木氏はゆっくりとステップに足を置き、たしかめるように降りた。
 日本人戦争墓地の鉄格子の扉を開けると、そこから急に『日本』がひろがる。
 黒っぽい砂利が敷きつめられ、石灯籠や黒御影の碑が並ぶ中を、飛び石に沿って進むと、右側に広々とした墓地がひらけていた。
 中央に大きな戦没者慰霊碑が立ち、それを取り囲むように数百の墓標が並んでいる。」