●「続・知られざる日豪関係」(265)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「そして、右目上の裂傷で顔が少し引きつっていたが、南は縫合手術をしたあとだといい、抜糸はすでにすんでいたように記憶しているという。
 高原氏たちはここへ来るまで、国際赤十字から与えられた衣類を身につけていたが、第二班に配属されてはじめて、捕虜用の制服に着替えさせられた。
 南もやはり同じである。
 制服を支給された南はどうだったのだろう。
 わずか五十日前までは飛行服に身を包み、若き海鷲として零戦の操縦桿を握り、白いマフラーをなびかせていたかれにとって、『P・O・W(注:prisoner of war=戦争捕虜)』の黒い文字は、重苦しいものだったに違いない。」