●「続・知られざる日豪関係」(266)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「いやおそらくは、矢尽き刀折れ長い彷徨の末に逮捕された他の捕虜に比べ、緒戦当時に比較的短時間で捕虜となった零戦パイロットとしては、ほかの誰よりも重圧を感じていたことだろう。
 私はそう思っていた。
 ところが、この羽根ををむしり取られた『籠の中の鳥』は、どうやらまったく逆の反応を示していたらしい。
 高原氏がいうには、南はこともあろうにこの捕虜たちが忌み嫌うワインカラーの制服を、脱色をしないどころかいつも『寝押し』していたというのである。
『大変明るいやつでねえ、それにとにかく南君はわれわれ五人のリーダーのような存在として、よくやってくれましたよ。
 面倒見が良かったんですねえ。」