●「続・知られざる日豪関係」(268)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「作業の手配といい、米食切り替えの要求といい、たしかにかなり面倒見のよい性格だったようだ。
 ただこれほど五人の世話役的な存在だった南だが、なんとなく違和感があり、孤独な面もあったという。
『いつでしたか、南君は収容所の司令部へなにかの用があって行きましてね、その帰りにラッパを貰って来ました。
 たしかイギリス製の軍用ラッパです。
 ところどころに傷やくぼみがありましたが、まあ音には支障ないようでした。
 しかし軍用ラッパというのは、ピストンも何もないやつですからねえ。
 それをかれは吹けたんですが、どこでいつ習ったんでしょうか。
 作業のないときなど、われわれは雑談にふけっていたんですが、かれはそのラッパを持って収容所の端へ行き、柵のところで吹いていましたよ。」