●「続・知られざる日豪関係」(269)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「あの頃南君は、なぜかわれわれに溶け込めなかったようですね。
 非常に明るい性格の男でしたが、その反面どことなく孤独な感じもありました。
 それからかれはよく英語を勉強していましてねえ。
 どこかよその班の民間人の中に、かなり年配の人でしたが、十三歳のときにオーストラリアに渡ったとかで、在豪生活が長く英語の上手い人がいました。
 キングス・イングリッシュからオーストラリアのスラングまで喋れるとかいっていましたが、南君はその人に習っていましたよ。
 毎日作業が終わると点呼に出て、五時の夕食がすむとすぐにその人のところへ行ってました。
 ええ、毎晩消灯時間までです。」