●「続・知られざる日豪関係」(272)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「目的は不明ではあるが、大学受験生さながらに、毎晩消灯まで英語学習に励んでいたという南の姿に、私は私自身の受験時代を思い出した。
 そしてそこに、軍人南忠男というわれわれの想像できぬ世界の人間ではなく、なにか共通するものを持つ、一人の青年南忠男を見出したように思った。
 高原氏からの取材を終えたあと、私はもう一人、ヘイ収容所における南忠男を知る人に会いに行った。
 その人は、軍人捕虜でもなければ軍属捕虜でもない、あのブルームのヤスムラやアンザイ同様、以前木曜島(英名サーズデイ・アイランド、クインズランド州北端の小島)で真珠貝採取の潜水夫をしていた人だった。
 オーストラリアから帰国して以来、私はまったく別のテーマである採貝移民たちのことを調べ続けていたが、そこでまた南忠男と出喰わしたのだ。」