●「続・知られざる日豪関係」(275)
〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜
「私は『南忠男』になる前の南忠男について、もっと知りたかった。
南の持つ奇妙な魅力に、惹かれはじめていたのかもしれない。
そうして私は、南忠男自身の、歴史のフィルムを逆転させる作業にとりかかった。
南忠男割り出し作業は、東京・恵比寿の防衛庁研修所(注:現・防衛研究所)にある、太平洋戦争の資料調査からはじまった。
まず、南がメルヴィル島に墜落した零戦のパイロットであるかどうかを確認しなくてはならない。
オーストラリア公文書にあるベル中尉の報告は、『オーバーオールを着た男は、ゼロ・ファイターのパイロットに間違いない』と断定したうえで、その男に関して説明してはいるが、残念ながらこの連邦政府諮問委員会の速記録には、南の名前も、ベル中尉がその男を見た日時もまったく載っていない。」