●「続・知られざる日豪関係」(281)
〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜
「ここまで調べてきたものの、私はこの名前を見ても、『あった!』という驚きも、とうとう見つけ出したという喜びも、まったく感じなかった。
すでに私の中では、『南忠男』という名が偽名であるとわかってはいても、はるかに親しみのあるものとなっていたからかもしれない。
ちょうど濠洲カウラ会の会員たちが、偽名で友人たちの思い出話をするようにだ。
南忠男とはまったくつながりのなさそうなこの名前が、本当に南になる前のものなのだろうか。
私はなんとなく肩すかしを喰らったように、満足感を得られないまま、何回か同じ資料を調べ直してみた。
が、ほかには該当する可能性がわずかでもあるようなものはまったくなく、行きつくところはやはり、海軍一等飛行兵豊島一だった。」