●「続・知られざる日豪関係」(295)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜
  

「搭乗機が被弾し、発動機が故障したのち、豊島一は何を考えていたのだろう。
 母艦『飛龍』へ打った『我死ス・・・・・・』の無電のとおり、自爆戦死することを考えていたのだろうか。
 そして自爆のつもりが、幸か不幸か失敗し、それゆえに『助かってしまった』のだろうか。
 発動機をやられた飛行機は、推進力を失い失速して墜落するか、あるいは気速を保って滑空するか、二つに一つである。
 しかしかりに滑空したとしても、推進力なしで気速だけで飛ぶ機体を操作するのは、非常に難しいことだ。
 豊島は、この機体操作に手こずったがゆえに逆に『壮烈ナル自爆』に失敗し、助かってしまったのだろうか。
 また、燃料が漏洩し、発動機にも被害を受けていたとなると、オクタン価の高い燃料はもちろん、エンジンの滑油も完全に流出し、したがって可燃性のものがなくなっており、墜落はしたが炎上はしなかったということも考えられる。」