●「続・知られざる日豪関係」(300)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


長峰会長の説明で、豊島機の被弾は徹甲弾によるものかもしれぬという可能性はつかめた。
 しかしたとえ徹甲弾によるものだったとしても、タンク、エンジンともに、毎分何百発とたて続けに発射される銃弾のうち、洩痕弾や炸裂弾のタイミングがはずれていたのは、豊島機にとってやはりラッキーだったというよりほかにない。
 ただしここで、もう一つの疑問が浮かび上がった。
 銃弾がエンジンを貫通した角度である。
 長峰会長の話を聞いたあとで、何冊か実戦経験者たちの書いた本を読んだが、やはり空中戦闘で敵機を撃墜する場合、敵機の後部上方にまわり込んで銃撃することが、定石とされていた。
 この角度がパイロットにとって盲点であり、また真うしろから狙うより標的の面積が広くなり、それだけ命中率が高くなるからだろう。」