●「続・知られざる日豪関係」(318)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


主翼面積二一・五三平方メートル、フラップ角0度で滑空角五度三十六分、降下率四・0六メートル毎秒、たとえ小型軽量で滑空性能抜群といえども、しかしグライダーではない。
 気流に乗って上昇することなどあり得ないのだ。
 その零戦が、どうやってタカプリミル・クリークにまでたどりついたのだろうか。 
 豊島機の不時着が意図的であったことを証明するため、私なりの推測をたててみようとここまでやってきた。
 しかし、この『距離』の問題にぶつかったとき、一つひとつ積み上げてきた積み木が、最後の一つを積もうとした瞬間、すべて崩れてしまったようだ。
 最後の一片、『八〇キロ』という数字が解決されぬ限り、積み木はまた崩れるのだ。
 私は完全に窮してしまった。」