●「続・知られざる日豪関係」(331)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


零戦が高度の五倍あるいは六倍の距離を滑空できるとしても、豊島機が被弾した高度五千メートルからでは、およそ三〇キロ程度しか滑空できない。
 あとの五〇キロを、豊島機はどうやって進んだのだろうか。
 二キロや三キロ程度の距離ならば、風の影響という自然条件の助けも考えられるが、五〇キロというのはまず不可能だ。
 まだ多少なりとも、エンジンによる推進力が残っており、自力でこの距離を進んだとしか思えない。
 しかし二番機新田三飛曹が燃料漏洩を目撃し、その後豊島が『我発動機故障』と打電するまで約五分間である。」