●「続・知られざる日豪関係」(335)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「大原氏のアドヴァイスは、かなり具体的な数字を含むものだった。
 話を聞いてから、私はあらためて零戦の写真や詳細図面、それに仕様書などを並べ、調べてみた。
 零戦のエンジン、七気筒複列星形十四気筒の中心部、つまりクランク室は、たしかに大原氏のいうように頑丈そうで、ちょっとやそっとでは壊れそうにない。
 おそらく二分の一インチの、高射砲弾片は、中心部ではなく左右いずれかにそれており、破壊されたのは二つか三つ、多くて四つのシリンダーだったのだろう。
 これならば機構的にみて、破壊されたシリンダーのピストンやクランク・ロッドが、他の部分にひっかからなければ、混合ガスが送られてくる限り、残されたシリンダーは機能を果たしてくれる。
 豊島機は、そういう状態にあったのかもしれない。」