●「続・知られざる日豪関係」(340)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「ここでもしかして、北北西三百浬の洋上で待つ『飛龍』まで、持ちこたえようと思ったかもしれない。
 しかし残り少ない燃料に、エンジンの馬力は急激に低下し、八時二十五分、母艦『飛龍』へ向けて、『我発動機故障ス』の打電。
 ここで眼前に見える、緑のメルヴィル島に不時着することを決意した。
『我死スメルヴィル島ノ中央密林中』
 エンジンが完全に停止したのは、この無電を打ったときではないだろうか。 
 エンジン停止、飛行不能、すなわち『零戦搭乗員としての死』を意識し、豊島は『飛龍』に最期を告げたのではないだろうか。」