〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜
「こうして豊島機の被弾、滑空、不時着を、私なりに再現してみたが、これはあくまでぎりぎりの線での仮定に立ったものである。
高射砲弾を浴びた豊島機が、これ以上良い条件にあったとは思えない。
しかし、とにかくかれはタカプリミル・クリークにたどりついている。
操練を出て七カ月目の、若きパイロット豊島は、このかつて経験したことのない状況の中で、慎重に慎重に、機を操作していたに違いない。
かれの全身全霊を傾注しての、操縦だったことだろう。
豊島一は生きのびた。
何のために生きのびたのだろうか。」