●「続・知られざる日豪関係」(352)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「自爆もせず、自決もせず、豊島は生きのびた。
 そして南忠男という名前の捕虜となった。
 だが、それから八百九十八日後、かれはカウラ事件を引き起こし、自決している。
 なぜかれは、ようやく得たはずの生を、ここであたかも投げ捨てるかのようにして死ななくてはならなかったのだろうか。
 何がかれにこれほどまでに大きな変化を与え、死へと導いていったのだろうか。
 豊島機の意図的な不時着を調べ、かれが『生への執着』を持ち続けていたに違いない、と私なりの結論を出したものの、そこから先のことを考えると、それはもう疑問と矛盾だらけだった。」