●「続・知られざる日豪関係」(378)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「このときラムゼイ少佐が提示した、ヘイ収容所への移動対象となった捕虜のリストには、約七百名の名前が掲げられていた。
 逮捕時に作成された捕虜名簿をもとに作られたリストで、内訳は兵捕虜と軍属である。
 南は、いや正しくは豊島一は、海軍一等飛行兵すなわち『兵』であるが、かれはメルヴィル島で逮捕され南忠男を偽称する際に、その階級も飛行兵曹としての『SERGENT(サージェント)』、すなわち『下士官』を名乗っている。
 したがって、移動される捕虜のリストにはかれの名前はなく、他の下士官約四百名とともに、残留組に入れられていたのだ。
 これは南にとって予想外のことであり、まったくの”計算違い”だったことだろう。」