●「続・知られざる日豪関係」(381)
〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜
「『戸主 兄』の『豊島徳繁様』あてにである。
もし豊島一が生きておれば、今頃は六十代前半の年になるはずだ。
ならば『母 コマツ』はともかく、『兄 徳繁』はまだ元気でいるかもしれない、と思ったからである。
私は思い切って豊島の本籍地である高瀬町町役場の住民課へ、確認の電話を入れてみた。
電話口に出た役場の女性職員は、この唐突な問い合わせにはじめは不審げな声だったが、『遺品が見つかったので、その主である戦死者について調べている』という私の説明に、納得してくれたようだった。
むろん捕虜ということには、いっさい触れてない。」