●「続・知られざる日豪関係」(382)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「女性職員は、『ちょっとお待ち下さい』と、受話器から離れ、しばらく何かを調べていたようだったが、ふたたび電話に出ると、
『調べるのに時間がかかりそうで、今日中には無理だと思いますので、明日十時にもう一度お電話下さい、用意しておきます』
 といって切った。
 翌朝、私は十時になるのを待って、すぐに役場へ電話をかけた。
 朝一番の仕事にしておいたのだろうか、その女性は電話に出ると、すぐに説明してくれた。
『御両親とも亡くなっております。
 兄の徳繁さんも戦死されておりますね。
 ですからその豊島一さんの血縁の方はおりません』 
 わずかながらだが期待を抱いていた私は、出端をくじかれたような思いだった。」