●「続・知られざる日豪関係」(383)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「電話を切ってから、この悲観的な短い答に、私はこれ以上追いかけることを、なかばあきらめかけていた。
 豊島一の両親、そして兄徳繁はすでに死亡している。
 しかしまったく血縁が途絶えているなどということはあるのだろうか。
 なんらかの血のつながりのある人が、その町かまたはどこかに、まだきっといるはずだ。
 私は、なんとしても豊島一のことをもっと知りたかった。
 かれの個人史のフィルムを、最後まで完全に逆転させてみたかった。
 地図で調べたかぎりでは、町はあまり大きくはなさそうだから、町中の豊島という姓を拾い出し、片っ端からあたってみれば、おそらく親族の一人ぐらいは浮かび上がるだろう、と思っていたからだ。」