●「続・知られざる日豪関係」(384)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「ところがこれが、大きな誤算だった。
 豊島一が生まれた勝間地区を含め高瀬町は、近隣の町村併合により現在一万七千ほどの人口となっているが、このうち豊島の姓は、電話番号簿の上だけでも百五十軒もある。
 さらに驚いたことに、その百五十軒の『豊島』のほとんどが、勝間の地区に集中しているのだ。
 これではとても一軒一軒を訪問し、四十年前に亡くなった人のことを尋ねてまわることなどできそうにない。
 かりにやったとしても、相当の日数がかかりそうだ。
 とりあえず高瀬町へ行って腰を据えてから、なんとか手がかりを捜し出すことにしようと、拠点になりそうな旅館の所在だけでも調べるために、私は電話ボックスから出て、ターミナルビル内にあった旅行センターのドアを押した。」