●「続・知られざる日豪関係」(386)
〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜
「『あの方もたしか高瀬町から来ているはずですから、ひょっとしたら旅館を知っているかもしれません、ちょっとお待ち下さい』
女の子に呼ばれてカウンターのところへやって来たその男性は、彼女の説明をうなずきながら聞いたあと、なんでわざわざ高瀬町なんかに泊りたいのか、といぶかしげな表情だった。
私は、かれが感じているだろう疑問に答えるために、大雑把な取材の目的を説明した。
その人は旅行センターの勤務ではなく、国鉄四国総務局に勤務しているのだが、ちょうど仕事の打ち合わせでそこに居合わせたのだった。
『まあ私ももうすぐ退社の時間ですし、よかったら同じ電車に乗りませんか。
旅館と同じ方向に帰りますから、途中まで御案内しますよ。
五時過ぎたらまたここへ来て下さい』」