●「続・知られざる日豪関係」(387)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「時計の針はやがて六時をまわり、電車が駅に止まるたびに乗ってくる通勤客、降りてゆく通勤客が私たちの横の通路を騒々しく往き来する。
 そして、電車がどこかの駅に止まったときだった。
 かれは知人を見つけたらしく手を振ってその人を呼びとめると、ちょうど空いていた横の席に座らせた。
 うちの近所に住んでいる人なんだがね、とかれはその男性を私に紹介したあと、
『この人がね、豊島一さんとかいう人を知っている人がいないかというんだが、あんた知らんかね。
 なんでも大正九年の生まれで、オーストラリアで戦死した海軍の戦闘機乗りだったとかいうんだが、勝間のあたりの出身だそうなんだけどねえ・・・・・』
 と早速話を切り出した。」