●「続・知られざる日豪関係」(390)
〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜
「急に声をかけられた彼女は、
『はあ、私も豊島ですが・・・・・』
と、ちょっと戸惑った様子だった。
だが、すぐに気を取り直したように私の方へ向き直ると、控え目な口調でいった。
『実はさっきから、なんとなくお話をうかがっていたんですが・・・・・、その豊島一さんというのは、私の叔父のようですね。
私は豊島の家に嫁いできたので詳しくは知りませんが、オーストラリアの方で死んだと聞いています。
それに私の主人の父の名は、さっきあなたの話していた豊島徳繁ですから・・・・・』
まさか。偶然という言葉はあるが、しかしこんな奇遇はあり得るのだろうか。」