〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜
「驚いたのは私だけではない。
国鉄職員の男性も、声をかけた当の本人も、ただ互いに顔を見合わせながら、唖然とするだけだった。
私は驚きと興奮をなんとか抑えながら、身を乗り出して彼女と話しはじめた。
しかし落ち着いて静かに話す彼女の声に比べ、まわりの人から見れば、私の声はまだうわずっていたに違いなかった。
その女性の名は豊島功代(いさよ)さんといい、夫の豊島昌三氏は、豊島家本家の長男であった豊島徳繁の実の息子だというのである。
つまり家族関係でいえば、功代さんにとって豊島一は義理の『おじさん』だった。」