●「続・知られざる日豪関係」(395)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「写真のほとんどは、色褪せてセピア色になった、軍服姿のものである。
 佐世保海兵団時代の、つばのないペンネント(注:海軍の水兵帽についているリボンのようなもので、帝国海軍時代には、これを「軍帽前章」と呼んでいた)に水兵服姿のもの、飛行帽にオーバーオールの飛行服を着て、練習機の前に立っている操練時代のものなど、それぞれにかれの軍隊生活を物語っていた。
 手にとって一枚一枚を見ると、森木氏や高原氏らがいうように、たしかに整った顔立ちの男である。
『なかなかの二枚目ですね』
 と私がいうと、
『ええ、そりゃもうきれいな顔しとりましたよ、一さんは。
 体も、こう、がっちりとしとって、いい男でした』
 とツヤ子さんは顔をほころばせながら、何度も大きくうなずいた。」