●「続・知られざる日豪関係」(396)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「やや尖った顎と、すっきりした眉、かなり茶色がかっていたのではないかと思われる瞳、比較的薄い唇、鋭角的だがソフトな印象を与える鼻。
 顔のつくりを見るかぎりでは、優しそうな気さくな若者というイメージであるが、全体にやや堅さを感じさせるのは、いずれも制服制帽を身につけているからだろう。
 ただ、操練卒業時に撮影したらしい飛行服姿の写真だけは、飛行機の前に立ちプロペラに左手を添え、右手を腰にあてて精いっぱいパイロットらしいポーズをとっているのであろうが、その表情には若き海鷲の初々しさとともに、まだあどけなささえはっきりと残っていた。
 これらの写真は、もちろん私にとってはじめて見る『豊島一』の姿であり、『南忠男』の姿だった。
 いや、そのはずだった。」