●「続・知られざる日豪関係」(397)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「だがしかし、実際に写真を手にしたとき、私には初めて見たという感動はまったくなかった。
 それどころか、『ああ、豊島さんですね』と、つい口をついて出そうになるほど、あまりにも自然に私の中に入って来た。
 いつの間にか私の南忠男像、豊島一像の空白だったはずの顔の部分は完全に埋められており、そこを埋めていた顔は、今写真で見ているものと寸分違わぬものだったといってもよい。
 あまりにも違和感のない、そして見慣れたとさえ思えるような、豊島一の表情だった。
 しかし、数枚目の写真を手にとったとき、私は思わずショックを覚え、目もとがひきつるほどにそれに釘づけとなった。」