●「続・知られざる日豪関係」(405)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「たとえ目の上の傷がなくとも、忘れることのできぬ戦友の姿を、この写真に見たのであろう。
『間違いないな、南君や』
 高原氏は、何度もそうつぶやいたり、うなずいたりしながら、写真の束を手に、一枚一枚めくっていった。
 そして、四十年ぶりに見た南の表情から、忘れかけていた記憶を呼びもどされたのか、写真の束をめくりながら、それまで私が聞いたことのなかった思い出を、問わず語りに話しはじめた。
 体はがっしりしていたくせに、野球が下手で、コンパウンド内の対抗試合にはあまり出なかったこと。
 喉を痛めているのか、よく首に白い包帯を巻いていたこと。」